【学校における運動器検診について】

 現代の子どもたちは運動不足による体力・運動能力の低下や、運動のし過ぎによるスポーツ障害の二極化した問題が深刻化しています。そこで、運動器の健康状態の把握や運動器疾患・障害を早期発見することが重要であると認識されており、これまでの調査研究から何らかの運動器疾患・障害を有する子供たちが1~2割いることが推定されています。

 今回の改正の趣旨は、近年における児童生徒等の健康上の問題の変化、医療技術の進歩、地域における保険医療の状況の変化などを踏まえて、検査項目等の見直しを行った結果です。

 そして、平成28 (2016)年4月1日より新しい運動器検診が施行され、対象は、小学校1年生~高等学校3年生までの全学年となります。

【運動器検診の流れ】

  1. 学校より配布される保健調査票を記入します。(調査票例は下記)
  2. 学校側が校内での体育やクラブ活動の様子も観察し、保健調査票の結果と合わせて総合的に情報を処理します。
  3. 側弯症の検査は従来通り全員が対象となります。その他、四肢に関しては①保健調査票の結果②学校における健康観察で異常またはその疑いがある③学校医による検診時の様子から必要と判断した場合の児童生徒が対象となります。 
  4. 3の①~③で該当した者は学校医による検診が行われます。
  5. 学校医が総合的に判断し、その結果を保護者に連絡します。保護者は速やかに整形外科専門医への受診を勧めます。そして診察した整形外科医は、結果を報告書に記載し、児童生徒が学校へ提出する流れになります。

【新たに加わる検査内容】

運動器健診イラスト

【検査意義】
片足立ち・・・ふらつきをみます。骨盤や背骨の歪み、大腿骨頭辷り症等のスクリーニングになります。
しゃがみ込み・・膝の痛み(オスグット病など)や半月板損傷、アキレス腱の痛みなどがないかをみます。
バンザイ・・・腕が耳につくか否かをみて、野球肩等のスクリーニングになります。
体前屈・・・腰を曲げたり、反ったりした時に痛みがあるかをみる。脊椎分離症のスクリーニングになります。
肘曲げ伸ばし・・しっかり肘の曲げ伸ばしができるか否かで、野球肘やテニス肘のスクリーニングになります。
先行調査では、指が床につかない(10-29%) 完全にしゃがめない(8-14%) バンザイができない(4-5%)の報告があります。

【検査にひっかかってしまったら・・・】
 検査にひっかかったからといって必ず異常があるわけではありません。
そこで先ずは整形外科に受診をし、骨などに問題がないか確かめてもらいましょう!そして、万が一異常が見つかれば早期に対処し、適切に治療を行いましょう。
 しかし、ここで問題となるのが『骨には異常がなかったけど痛みがあったり、もともと体がすごく硬い』などの場合です。骨には異常なくても痛みがあるのは普通ではないですよね?それにも関わらず、今まではレントゲン異常なし!痛みは湿布でといった感じで終わってしまっていたこともあったはず。
 大事なのは『骨に異常がないなら、何が痛みの原因になっているのか』を考えることです。そのほとんどは柔軟性が欠如していることによるものです。従って、柔軟性がない=体が硬い(筋肉が硬い)ということになり、当然レントゲンを撮っても異常は見つかりません。
 この運動器検診で見つかった現在痛みがある子と、痛みはないが柔軟性が欠けていて今後痛みが生じるかもしれない子にしっかり対応するためにリハビリテーションなども必要になってくると考えられます。

 

運動器健診表3