岡崎にあります「はまな整形外科クリニック」より線維筋痛症についてご案内します。

線維筋痛症について・・・

線維筋痛症(Fibromyalgia:FM)は慢性の広範囲な骨格系の疼痛、こわばりを主訴とし、疲労感・抑うつ・睡眠障害を伴う原因不明の疾患です。

欧米では100年以上前から知られている疾患ではありますが、日本での認知度は低く、一般医の25~30%程度しかこの病名を知らず、患者さんの9割以上が病名すら知らないとの調査報告もあります。日本では2007年現在のところ厚生労働省の調査から、有病率は人口の約1.7%、患者数は200万人程度と推定されています。全体の75%以上が女性で特に20-60歳中高年の発生率が高いと言われています。

原因は

  • 事故、外科手術、自己免疫疾患、歯科治療、肉体的又は精神的ストレス、PTSD、妊娠・出産、ウイルス感染、化学物質過敏症子宮内膜症、風邪、など多様な「痛み」がきっかけ(原因ではなく要因)で発症しているのではないかと言われる。
  • アメリカでは中枢神経系及び末梢神経系の機能異常ではないかと考えられている。
  • 中枢神経の異常によって痛みの回路が変わり痛みを増幅させている。
  • 脊髄内の末梢からの痛みの伝達を抑制する仕組みがストレス等により機能低下するとの説。
  • 脳の神経細胞(ニューロン)が電気信号を使って情報伝達する時に何らかの異常が起こる。
  • 神経細胞の遺伝子が変異して書き換えられるという説もある。
  • 細胞の器質的(眼に見える病変)問題でなく、機能的(細胞の働きや活動に異常)問題であるとの説。
  • 遺伝的な要因やなんらかの免疫異常がかかわっているとも言われている。

など、色々な説が言われているが現在のところ、原因不明であります。

症状は

慢性的な全身痛で特に頸部、腰部などの体軸に集中する傾向にあるとされています。
また、皮膚の痛覚過敏を認めることもあり、朝のこわばりやしびれ、頭痛、微熱、過敏性腸症候群、睡眠障害などの様々な症状があります。

身体的所見の特徴

身体的所見の特徴は健常人より痛みを感じる特異的な圧痛点が存在する。
米国リウマチ学会の診断基準では18ヶ所の圧痛点があるとされている。
血液検査やレントゲン、CT、MRIや筋電図などの検査を行っても異常所見は認められません。

身体的所見の特徴イラスト

線維筋痛症の重症度

重症度QOL
StageⅠ米国リウマチ学会分類基準の18ヶ所の圧痛点のうち、11ヶ所以上で痛みがあるが日常生活に重大な影響を及ぼさない
StageⅡ手足の指など末端部に痛みが広がり、不眠・不安感・うつ状態が続く。日常生活が困難
StageⅢ激しい痛みが持続し、爪や髪への刺激、温度・湿度変化など軽微な刺激で激しい痛みが全身に広がる。自力での生活は困難
StageⅣ痛みのため自力で体を動かせず、ほとんど寝たきり状態に陥る。自分の体重による痛みで、長時間同じ姿勢で寝たり座ったりできない
StageⅤ激しい全身の痛みとともに、膀胱や直腸の障害、口渇、目の乾燥、尿路感染など全身に症状がでる。普通の日常生活は不可能

薬物療法

確立した治療法は現在のところありません。
まずは消炎鎮痛剤(痛み止め)が第1段階で使用されますが、ほとんどの効果は期待できません。
通常の抗炎症剤のほか下行性疼痛抑制系を賦活するノイロトロピンの内服薬あるいは注射薬が効く場合があります。神経や精神状態の改善が線維筋痛症の症状を改善させるという臨床例が多く認められていることから、抗うつ薬を処方される場合が多くあります。

『整形外科でどうして抗うつ薬?』、『私はうつ病じゃない!!』と思われる方、抗うつ薬に対して抵抗がある方もたくさんいらっしゃると思います。

私たちの意図としては、冒頭で書かせていただきましたように、ストレスなどによって交感神経と副交感神経のバランスが崩れてしまったものを、抗うつ薬を使い自律神経の働きを正常に戻して負の連鎖によって引き起こされている痛みを改善させる目的で処方させて頂いています。

抗うつ薬を内服してすぐ効果が表れてくるものではありません。ある程度、自律神経のバランスを戻していくためには時間を要してしまいます。(薬の効果については個人差があります)
日本のみならず、アメリカをはじめとした諸外国でも慢性疼痛で消炎鎮痛剤で効果がみられない方に抗うつ薬を処方したところ、症状の改善がみられた!!という報告が数多くあります。抗うつ薬を内服することは決して悲観すべきものではありません。現在では、整形外科領域の慢性疼痛の治療に対してスタンダードになりつつある薬だと感じております。

使用される薬剤の例

  1. プレガバリン(商品名:リリカ)
  2. 選択的セロトニン再取り込み阻害剤(SSRI)(商品名:ジェイゾロフト)
  3. 抗てんかん薬(商品名:ランドセン)(商品名:ガバペン)

運動療法

適度な運動は筋肉の緊張をほぐし、心拍数を減少させ、血圧を下げるといった効果に加えて、心にもとても重要な役割を果たします。

私たちがストレスを感じる時、体内ではカテコールアミンと呼ばれる物質が分泌されますが、この物質が私たちに「イライラ感」や「不安感」といった精神的な症状をもたらします。

このカテコールアミンは、ウォーキングなどの有酸素運動をすることによって代謝され、消去されてしまうということが証明されています。ウォーキングや水中ウォーキングなどには、イライラ感や不安感などを消す効果があると考えられます。脳と体の疲労のアンバランスを解消し、睡眠障害を改善する効果も期待できます。

また、運動習慣のある人はない人に比べて生活満足度が高いという報告もあり、適度な運動を習慣化することでストレス緩和とともに生活の質を高めることにもつながっていきます。

有酸素運動とは

水中ウォーキングやジョギング、エアロビクスなど、運動の強度はあまり高くなくても、ある程度の時間行うことができる運動を「有酸素運動」といいます。

これは運動中、筋肉を収縮させるためのエネルギー「アデノシン三燐酸(ATP)」を、呼吸によって体内に取り入れた酸素を使って作り出すことからそのように呼ばれています。

有酸素運動は脂肪を燃焼させることから、高脂血症、高血圧、糖尿病、肥満などの生活習慣病予防に効果があります。

また、善玉コレステロール(HDL)値が上昇したり、筋量の増加に伴って基礎代謝量が増加したり、ストレス解消などに効果があることで注目されています。

線維筋痛症に限らず慢性的に繰り返している、または持続する腰痛や頚部痛などの原因は意外と筋肉疲労ではなく、家庭内・職場・学校生活など日々の生活で感じるストレスが原因になっていることがあります。

コミュニケーションの重要性

クリニックでは薬物療法や運動療法だけではなく、患者様とコミュニケーションを図りながら身体的・精神的サポートできるように日々努力しています。痛みというのはなかなか他人には理解してもらえないものです。時には大切な家族にすら理解をしてもらえないこともあります。特に線維筋痛症のような痛みは一般の人は体験したことがないわけですから、理解はより困難を極めます。当院ではなるべく患者さんの訴える痛みというものを共感し理解するようスタッフ全員心がけています。医療者に対して遠慮をする必要はないと思います。自分自身の大切な体なのです。なるべく心配事を払拭できるようお手伝いをさせて頂きたいと思います。

痛いと言ったら痛い

私たちのクリニックでは、出来るだけ皆さんが納得できるような説明ができるように努力しています。そのためには医師だけが窓口では、時間も制約されたり、また患者さんが遠慮がちになる場合もあります。より皆さんが気軽に話せるような雰囲気を作るため、看護師、理学療法士、放射線技師、事務員が一丸となりチームで対応できるよう心掛けています。日常の何気ない会話の一つひとつに治療を進めていくうえでのヒントが隠されていることもよくあります。気軽にスタッフに話しかけてください。話しただけですっきりして、痛みが軽減する人もみえます♪