一般整形外科
岡崎にあります「はまな整形外科クリニック」より膝関節痛の原因や治療についてご案内します。
高齢社会を迎えて、加齢変化を基盤とした変性疾患は確実に増加傾向にあります。その中でも代表的なのが変形性膝関節症です。当クリニックにも、たくさんの患者さんが通院されています。
脊椎と同様、加齢に伴い膝関節も変性、磨耗が起こり痛みを発します。
進行すると、人工関節に置換する手術をせざるを得なくなります。
しかし実際の患者さんの多くは手術を望んでおらず、できれば手術以外の治療法がないのかと考えている方がほとんどです。早期の変形性膝関節症であれば手術以外の治療で症状を抑えることは十分に可能です。そのため、いかに早期から変形を遅らせる治療、指導(リハビリテーションも含め)をするかが重要なのです。
多くの方は病院で何とかしてもらえると考えがちですが、実は患者さんの治療に対する理解と努力が必要です。内服療法、注射療法に加えて、最も重要なのが運動療法(ストレッチ、筋力トレーニング)です!これらをバランスよく取り入れていくことが重要です。
正しい治療を理解して行い関節の悲鳴を抑えましょう。
変形性膝関節症は、膝関節を構成する骨・軟骨や半月板、靭帯などの加齢による変性を基盤とし軟骨破壊や骨増殖によって変形を生じる疾患です。
変形性膝関節症は整形外科疾患の中で最も多く遭遇する疾患の一つで、その頻度は年々増加傾向にあり40歳以上の女性の61.5%、男性の42%にX線上で変形性膝関節症の所見がみられ、そのうち約90%以上の方が内側の変形を呈しています。
少しでも変形性膝関節症についてご理解頂けるように、症状や治療などについて説明します。
関節軟骨は骨と骨が擦れあう時に生じる摩擦を非常に少なくします。また、骨にかかる衝撃を和らげるクッションのような働きもしています。
関節を曲げるときには、関節軟骨に圧力が加わり、関節軟骨から関節液が押し出され、曲げ伸ばしがスムーズになるという仕組みにもなっています。
半月板は、内側半月板と外側半月板があり、関節の適合性を良くし安定性を与えながら、大腿部から受ける体重の荷重を分散し衝撃を吸収するクッションの働きをしています。
関節液は透明で粘り気がある液体で、ヒアルロン酸やたんぱく質を含んでいます。このヒアルロン酸とたんぱく質の複合体が関節軟骨の表面を覆って、関節がスムーズに動くように潤滑液の働きをしているのです。「関節液」=「潤滑油」のようなものです。また、滑膜で作られた関節液は関節軟骨に栄養を与える働きもあります。
変形の進行に応じて、gradeⅠからgradeⅤに分類されます。
grade I
grade II
grade III
grade IV
grade V
変形性関節症は大きく分けて特に明らかな原因がなく発症する一次性関節症と、外傷などの既往がありそれに続発して発症する二次性関節症に分類されます。
※膝関節には膝関節にかかる荷重は内側に60%、外側に40%の割合となり、平地歩行時に体重の2~3倍、ジャンプ動作では4~6倍もの体重がかかると言われています。
O脚の場合には内側にかかる荷重の割合が増加し、X脚では外側の荷重の割合が増加します。
O脚・X脚は人種によっても特徴があり、日本人の場合はもともとO脚の方が多いため日本人における変形性膝関節症は90%以上が内側型です。
治療には大きく分けて、保存療法と手術療法に分けることができます。
関節痛が強い、関節の腫脹がある、炎症所見を認める場合には炎症を抑える目的で消炎鎮痛剤や漢方薬、湿布や塗り薬の処方を行っています。
症状に応じてステロイド関節内注射とヒアルロン酸ナトリウムの関節注射を使用します。
ステロイド関節内注射は、疼痛を強く認める症例や関節水腫(関節に水がたまる状態)を認める症例に対して抗炎症作用を期待して使用します。
適応や使用方法(回数、間隔など)については患者さんの生活様式、趣味、運動量を考慮し、さらに糖尿病や緑内障、心疾患、肝疾患、腎疾患などの合併症を留意した上で使用いたします。
人の関節液の主成分はヒアルロン酸です。ヒアルロン酸ナトリウムの関節内注射は関節内の環境を整えるために行っていくものです。
ヒアルロン酸は滑膜細胞より分泌され軟骨の合成作用や関節の潤滑作用に関与しています。ヒアルロン酸ナトリウムは鶏冠から抽出された高分子量(60万~120万)の粘弾性の物質です。
ヒアルロン酸ナトリウムは破壊された軟骨の表面に膜をはり、軟骨を保護し、軟骨の変性を防ぎ、関節可動域(関節の動き)を改善する作用を有しています。あたかも、車のエンジンオイル(ヒアルロン酸ナトリウム)がエンジン(関節)の磨耗と摩擦を軽減し、歯車の動きを滑らかにする作用に似ています。また、ヒアルロン酸ナトリウムは、関節液のヒアルロン酸の濃度を高め、関節水腫(関節に水がたまる状態)を改善する作用もあります。さらに、滑膜に反応して痛みを誘発する発痛物質を抑制し、関節痛を軽減させる作用も認めます。
使用回数は連続5回投与(1週間に1回)となっていますが、症例に応じて使用回数を増減します。
尚、副作用はほとんど無く非常に安全で使いやすい製剤と考えられています。
当院のリハビリテーションは、理学療法士が、なぜ変形を招いてしまったのか、1人ひとり患者さんの身体のメディカルチェックを行い、患者さんに必要な筋力トレーニングやストレッチ、ケアの方法を指導します。
また歩行チェックを行い、必要な方にはインソール(靴の中敷き)を作製し膝に掛かる負担を軽減させ、変形の進行を予防、疼痛の緩和を図ります。
患者さん自身が自分の身体の改善点、改善法を理解し行うことが症状の緩和や今後の変形の進行を予防することになるため、リハビリテーションはとても重要です。
※詳しくは「リハビリテーションの下肢のリハビリ」のページご参照ください
内外反の不安定性が強い方には、両側に支柱付き膝装具で歩行時の不安定性を予防します。
上記の保存療法では改善が見込めず、疼痛により日常生活に支障がある方が最終手段として行うものです。
人工膝関節置換術(TKA)はすり減った関節の表面を削り、金属と特殊ポリエチレンに入れ替えて痛みを楽にする手術です。膝全体を丸ごと取り替えるのではなく、表面1センチほどを入れ替えます。膝は太ももの骨とすねの骨とお皿の骨からできています。この3つの骨の表面を取り替えて間に特殊ポリエチレンを挟みます。同時にO脚も矯正し、膝のバランスが最高となる軽いX脚に整えます。これにより痛みの再発を予防し人工関節を長持ちさせます。
UKAは膝の内側のみを入れ替える手術です。UKAは膝の負担も少なく早い社会復帰が可能です。現在では、TKAにも劣らない成績が認められています。
変形性膝関節症、大腿骨顆部骨壊死症に対し脛骨を骨切りし、荷重方向を変えることで病変のある部位への負担を減らす手術です。自分の骨を温存できるメリットがある反面、早期の荷重ができません。
どの手術法を選択するかは、手術をしてくれる先生と相談の上決定します。