一般整形外科
岡崎にあります「はまな整形外科クリニック」より骨粗鬆症の原因や治療についてご案内します。
高齢化が進んだ先進諸国では、生命予後よりも生活の質(QOL)や日常生活動作(ADL)の低下が問題となる慢性疾患が、患者数や医療費の面でも疾患全体の中で大きな位置を占めています。
その中でも、骨粗鬆症は代表的なものであります。骨粗鬆症は遺伝的背景と長年の生活習慣に基づく多元的な要因により発症するが、結果的に重篤な合併症である骨折を引き起こし、腰痛や脊椎変形、あるいは寝たきりなどの要介護の原因となることが多いです。
しかし、未だ骨粗鬆症について正しく理解が得られておらず1100万人いるといわれる骨粗鬆症の患者様の医療機関受診率は20%に達していないのが現状のようです。
高齢社会において要介護状態を予防し、健康寿命の延伸を図ることは私たち医療者の願いでもあり、みなさんの願いでもあると思います。少しでも、骨粗鬆症についての理解を深めて頂ければと思います。
骨粗鬆症とは『骨量が減少し、骨の微細構造が劣化したために骨が脆くなり骨折しやすくなった病態』と定義されています。
退行期のある年齢における個人の骨量は、成長期に得た最大骨量とそれ以降の骨量減少速度に依存すると言われています。さまざまな骨で行われている代謝(リモデリング)において、骨吸収(骨からカルシウムなどが血液中に溶け出すこと)の亢進により失われる骨量を、骨形成(骨にカルシウムなどが吸着すること)により十分に回復することができなくなると、骨量の減少が起こります。
骨量は男女とも20歳頃に最大となり40歳代半ばでほぼ一定に維持されます。その後緩やかに減少しますが、男性では70歳以降、女性では閉経前後の数年間に骨量が急速に減少していきます。
女性は閉経後、骨吸収と骨形成の両者が亢進し、骨吸収と骨形成の不均衡が生じます。
そのため、獲得する最大骨量を大きくすることと、骨量減少を最小限に食い止めること(一次予防)が骨粗鬆症対策の基本であるが、同時に過度の骨量減少を早期に予防して有効な介入を行うこと(二次予防)が将来の骨粗鬆症とそれによる骨折予防のために重要となります。
女性が全体の7割を占めるとされています。50歳代の女性の21%、60歳代の48%、70歳代の67%、80歳代の84%とされています。

腰痛や腰が曲がってきたなどありますが、大きな問題は骨折を起こしやすくなる事です。骨折部位としては、腰椎、大腿骨頚部、橈骨遠位端、上腕骨頚部が好発部位です。特に大腿骨頚部骨折は移動・活動性の制限と自立性の低下、QOL(生活の質)の低下を招く原因となります。大腿骨頚部骨折の発生数は年齢とともに増加し、特に65歳以降になると、その発生頻度は急増します。骨折後の転帰では約25~30%の方が寝たきりに至るとの報告もあります。

正常な腰椎のレントゲン

腰椎圧迫骨折のレントゲン

正常な上腕骨のレントゲン

上腕骨頚部骨折のレントゲン

正常な股関節のレントゲン

左大腿骨頚部骨折のレントゲン

正常な手関節のレントゲン

橈骨遠位端骨折のレントゲン
骨粗鬆症は大きく原発性骨粗鬆症と続発性骨粗鬆症に分けられる。
閉経や老化に伴い骨密度が低下するタイプのものであり、骨粗鬆症のほとんどは原発性です。閉経後骨粗鬆症では更年期におけるエストロゲン分泌量の低下が原因となり、閉経後女性にエストロゲンを補充すると骨量の減少が抑制されます。また、老人性骨粗鬆症では加齢に伴う腎機能の低下によって生じるビタミンDの産生低下がそれぞれ原因となります。男性では女性のように更年期で急速にエストロゲン産生量が低下して骨粗鬆症に陥るということはないが、加齢は骨量の減少要因の一つです。男性でも骨密度の低下と血中エストロゲン量には相関があることも示されています。女性ではエストロゲンは卵巣で産生されるが、男性では卵巣がないため、類似の構造を持つテストステロン(男性ホルモン)から変換して産生する。高齢の男性ではテストステロン量が減少するためエストロゲン量も減少し、骨密度の低下につながると考えられています。
続発性骨粗鬆症とは何らかの疾患のバックグラウンドの上に成り立つタイプです。続発性骨粗鬆症の中にはさらに内分泌性、栄養性、薬物性(おもにステロイドによる)、不動性、先天性という細分類があります。
| 原発性骨粗鬆症 | 退行期骨粗鬆症 | 閉経後骨粗鬆症 | 女性の閉経後は、女性ホルモンが少なくなるため骨吸収が強くなる |
|---|---|---|---|
| 老人性骨粗鬆症 | 加齢とともにおこり、男性・女性の両方にみられる | ||
| 特発性骨粗鬆症 | 妊娠後骨粗鬆症、若年性骨粗鬆症など | ||
| 続発性骨粗鬆症 | 薬剤性 | ある種の薬剤を長期間使用するとおこる | |
| 関節リウマチ | 炎症のある関節の近くの骨がもろくなる。また、痛みのために運動しない(動かない)ためにおこる | ||
| 糖尿病 | 特に1型の糖尿病でみとめられる | ||
| 甲状腺機能亢進症 | 甲状腺ホルモンの働きが過剰になり、骨吸収が強くなる | ||
| 性機能異常 | 両方の卵巣を手術により摘除した場合、性ホルモンが低下し、閉経後と同様の状態になる | ||
| 不動性 | 寝たきりなどで骨に体重をかけていない場合、骨を作る働きが弱くなる | ||
| その他 | 栄養性(偏食・嗜好品のとりすぎなど)、先天性疾患など | ||
などがあげられます。これらを予防することは骨粗鬆症の改善にもつながります。また、骨粗鬆症は、動脈硬化の危険因子とも考えられ、その予防は心筋梗塞などの予防にもつながります。
骨粗鬆症診断基準では、脆弱性骨折の有無と、骨密度値または脊椎エックス線像による骨粗鬆化判定の2項目によって診断を行うように定められています。
『脆弱性骨折』がない場合、骨密度の測定値が若年性成人平均値(young adult mean:YAM)の70%未満であれば『骨粗鬆症』、70~80%であれば『骨量減少』と診断します。
なお、『脆弱性骨折』を有する場合には、骨密度値がYAMの70%未満でなくても骨粗鬆症と診断するとされています。
低骨量をきたす骨粗鬆症以外の疾患または続発性骨粗鬆症を認めず,骨評価の結果が下記の条件を満たす場合,原発性骨粗鬆症と診断する。
| I 脆弱性骨折(注1)あり | ||
| II 脆弱性骨折なし | ||
| 骨密度値(注2) | 脊椎エックス線像での骨粗鬆化(注3) | |
|---|---|---|
| 正常 | YAMの80%以上 | なし |
| 骨量減少 | YAMの70~80% | 疑いあり |
| 骨粗鬆症 | YAMの70%未満 | あり |
YAM:若年成人平均値(20~44歳)
注1:脆弱性骨折:低骨量(骨密度がYAMの80%未満,あるいは脊椎エックス線像で骨粗鬆化がある場合)が原因で,軽微な外力によって発生した非外傷性骨折。骨折部位は脊椎,大腿骨頸部,橈骨遠位端,その他。
注2:骨密度は原則として腰椎骨密度とする。ただし,高齢者において,脊椎変形などのために腰椎骨密度の測定が適当でないと判断される場合には大腿骨頸部骨密度とする。これらの測定が困難な場合は,橈骨,第二中手骨,踵骨の骨密度を用いる。
注3:脊椎エックス線像での骨粗鬆化の評価は,従来の骨萎縮度判定基準
日本人は慢性的なカルシウム不足と言われており、国民健康・栄養調査によると、成人の平均カルシウム摂取量は1日600mg/日(1日に必要な摂取量)を下回っており先進国中では最低レベルと言われています。厚生労働省によるカルシウムの食事摂取基準に照らしあわせてみると、60歳代はほぼ目標量に達しているが、特に20歳~40歳代のカルシウム不足が顕著であるのが解ると思います。
骨粗鬆症の治療ガイドラインでは1日800mgのカルシウムの摂取を勧めていますので、日々の食生活の中で積極的にカルシウムをとることが望ましいとされています。骨のためにはカルシウムだけでなく、ビタミンDやKなどほかの栄養素にも気を配らなければなりません。
| 性別 | 男性 | 女性 | ||||
|---|---|---|---|---|---|---|
| 年齢 | 目安量 | 目標量 | 上限量 | 目安量 | 目標量 | 上限量 |
| 1~2(歳) | 450 | 450 | - | 400 | 400 | - |
| 3~5(歳) | 600 | 550 | - | 550 | 550 | - |
| 6~7(歳) | 600 | 600 | - | 650 | 600 | - |
| 8~9(歳) | 700 | 700 | - | 800 | 700 | - |
| 10~11(歳) | 950 | 800 | - | 950 | 800 | - |
| 12~14(歳) | 1000 | 900 | - | 850 | 750 | - |
| 15~17(歳) | 1100 | 850 | - | 850 | 650 | - |
| 18~29(歳) | 900 | 650 | 2300 | 700 | 600 | 2300 |
| 30~49(歳) | 650 | 600 | 2300 | 600 | 600 | 2300 |
| 50~69(歳) | 700 | 600 | 2300 | 700 | 600 | 2300 |
| 70歳以上 | 750 | 600 | 2300 | 650 | 550 | 2300 |
日本人の食事摂取基準2005年版より

思春期にカルシウムを多く摂取することにより、高い最大骨量が得られ、閉経期以降の骨量減少に備えることができます。思春期でのカルシウム摂取は積極的な骨粗鬆症予防法といえます。
若年女性ではカルシウム摂取量と骨量との間に強い相関関係が認められますが、閉経後の女性・高齢者ではそれほど明確ではありません。特に高齢者の方では、カルシウム摂取量が十分であっても、ビタミンD不足や腸管機能低下などのため、一般に若年者に比べてカルシウム吸収率が低下していることを念頭に置く必要があります。
カルシウムは、食べた分すべてが吸収されるわけではありません。個人差もありますし、食品によって含まれるカルシウムの吸収されやすさが違います。カルシウムを多く含む食品、カルシウムが吸収されやすい食品をつとめてとるように心がけましょう。
次の4つの食品群を意識してバランスのよい食事を心がけましょう。
カルシウム吸収率50%
カルシウムと良質のたんぱく質が豊富で、吸収率の高い事が一番の特徴です。料理無し手間要らずで、そのまま食べる食品が多く、毎日手軽に取れます。
乳糖不耐症や苦手な方は、加熱料理の利用や、発酵食品のヨーグルトやチーズの利用から始めるとよいでしょう。
含まれる脂肪は動物性です!肥満や高脂血症の人は取り過ぎに注意しましょう。
(低脂肪牛乳や、スキムミルクの利用がおすすめです。)
カルシウム吸収率18%
カルシウムとイソフラボンという、骨粗鬆症に有効な成分を含んでいます。
畑のお肉と言われるとおり、良質の植物性たんぱく質が豊富な事が特徴です。
吸収率は低いですが、加工品として豆腐、納豆、湯葉、厚揚げなど種類が豊富です。
また、発酵食品の納豆は骨の強化に役立つビタミンKも豊富に含みます。
カルシウム吸収率30%
乳製品に比べ吸収率は劣りますが、日本では馴染みの深い食品です。
小魚、酢を利用したマリネや南蛮漬けは、骨ごと取れる事で食品自体に含まれるカルシウム量が多くなります。海藻はカルシウムの吸収を助けるマグネシウムを含んでいます。
(酢のクエン酸効果はカルシウムの吸収率をアップします。)
カルシウム吸収率18%
カルシウム吸収率は低く、大量に野菜からとる事は難しいですが、ビタミンA・C・Kが吸収を高める効果がある為、十分取る事で生活習慣病の防止につながります。他のカルシウムの多い食品と組み合わせ易いのも特徴です。
野菜の中でも小松菜、チンゲン菜、菜の花などの緑黄色野菜は、比較的カルシウムも多く含まれます。野菜の摂取目安量とされる350gのうち、1/3は緑黄色野菜でとるように習慣づけるとよいですね。
毎日の食生活に4つの食品群から最低2群以上(出来れば4群)取る事が、カルシウムたっぷりのバランス栄養食の基本です。
ビタミンDは腸管でのカルシウム吸収を促進させます。多くの高齢者では血中ビタミンD濃度が低値であり、これはビタミンDの摂取量が減るだけでなく、外出機会の減少と皮膚の機能低下とにより、皮膚でのビタミンD合成が低下すると考えられています。高齢者ではカルシウムとビタミンDの十分な摂取が骨折発生を抑制するものだと言われています。

ビタミンKは骨へのカルシウム吸着を補助する働きがあります。骨折を有する高齢者では血中ビタミンK濃度が低値であり、ビタミンK不足は骨粗鬆症の発症や進展に関与すると考えられています。

※インスタント食品や加工食品に多く含まれているリンやナトリウム、またはカフェインはカルシウムの尿中排泄を促進するので過剰摂取に注意する必要があります。
また、アルコールも少量なら問題はありませんが、多量に摂取するとカルシウムの吸収を阻害し尿中排泄を促進します。
骨粗鬆症のガイドラインでも1日2単位以上のアルコール摂取を骨粗鬆症による骨折の危険因子とされています。
骨粗鬆症による骨折のうち、大半が転倒したことによるものです。クリニックでは、転倒予防のため筋力増強、バランス訓練、歩行のバランス、歩行、柔軟の訓練などを行っています。
骨粗鬆症の患者さんは、すでに骨折を起こしていたり、起こしやすくなっていたりします。「運動などしないで安静にしたほうがよいのでは?」と考えるのは大きな間違いです。運動をしないでいると骨は次第に弱くなっていきます。骨に適度な力(主に体重)をかけることで、骨の強さは維持されています。骨に対する運動の効果の現れ方は、一般に運動の時間が長いほど、また骨にかかる力が大きいほど、著しいとされています。しかし、強い運動は運動習慣のない中高年の人には不適です。軽い運動であっても、時間を十分かければ効果があります。体力や骨折のおこりやすさは個人差がありますし、高齢者では他の病気の合併も考えられますので、運動を始める前にまずはご相談下さい。理学療法士が個々の体力など考慮したうえで運動療法を指導させていただきます。
老化によって減ってしまった骨を若いころのように戻す薬はありません。
しかし、最近では早期治療により、骨粗鬆症による骨折がかなり防げるようになりました。現在使われている薬は、骨の吸収(骨が溶ける)を抑える薬、骨の形成(骨を作る)を助ける薬、吸収と形成の骨代謝を調節する薬の三つに大別できます。
| カルシトニン | 骨量の減少を抑え、背中や腰の痛みをやわらげる |
|---|---|
| ビスフォスフォネート | 骨量を明らかに増加させ、骨折を予防する |
| イプリフラボン | 骨量の減少を抑える |
| ラロキシフェン | 骨量を増加させ、骨折を予防する |
| 女性ホルモン | 閉経期の女性が対象で更年期症状を改善し骨量の減少を抑える |
| ビタミンK2 | 骨量の減少を抑え、骨の形成を助ける |
|---|
| 活性型ビタミンD3 | 腸からのカルシウムの吸収と骨の形成を助ける |
|---|---|
| カルシウム剤 | 食事からカルシウムがじゅうぶんとれない場合、長期に服用すれば骨量減少の防止になる |
| 薬剤名 | 骨密度(グレード) | 椎体骨折(グレード) | 非椎体骨折(グレード) | 総合評価 |
|---|---|---|---|---|
| カルシウム剤 | わずかに増加効果(B) | 防止しない(C) | 防止しない(C) | C |
| 女性ホルモン製剤 | 増加効果(A) | 防止する(A) | 防止する(A) | C |
| 活性型ビタミンD3製剤 | わずかに増加効果(B) | 防止するとの報告あり(B) | 防止するとの報告あり(B) | B |
| ビタミンK2製剤 | わずかに増加効果(B) | 防止するとの報告あり(B) | 防止するとの報告あり(B) | B |
| エチドロネート | 増加効果(A) | 防止するとの報告あり(B) | 防止するとの報告あり(B) | B |
| アレンドロネート | 増加効果(A) | 防止する(A) | 防止する(A) | A |
| リセドロネート | 増加効果(A) | 防止する(A) | 防止する(A) | A |
| SERM(塩酸ラロキシフェン) | 増加効果(A) | 防止する(A) | 防止するとの報告あり(B) | A |
| カルシトニン製剤 | わずかに増加効果(B) | 防止するとの報告あり(B) | 防止効果が期待される(C) | B |
| イブリフラボン | 減少の防止効果あり(C) | 報告がきわめて少ない(C) | 報告がきわめて少ない(C) | C |
| 蛋白同化ホルモン製剤 | 減少の防止効果あり(C) | 報告がない(C) | 報告がない(C) | C |
Osteoporosis Jpn 2006;14:665‐8一部改変 引用
※カルシトニン製剤:疼痛に関して『鎮痛作用を融資、疼痛を改善する(グレードA)』